CLOSE
CLOSE
CLOSE

Current Rock Fes.

Text by Ryoichi Kato

異例尽くしの今年のフジロック。
世界的に見ると異例じゃない理由

今年は“異例の進路”といわれた台風12号に脅かされるも、悪天候に負けぬ“異例”ぶりで音楽ファンを楽しませた〈フジロック・フェスティバル '18〉。世界的なトレンドを要所に取り入れた〈フジロック〉の新たな試みをレポートします。

ヒップホップとロックの逆転現象、その世界的トレンドが日本にも

まず、今年の〈フジロック〉の最大の目玉となったのは、ボブ・ディラン。……ではなく、メインステージのトリを飾ったケンドリック・ラマーやN.E.R.Dをはじめとしたヒップホップ勢です。ヒップホップのアーティストが日本のフェスに出演すること自体は珍しいことではありませんが、それでも今年が異例なのは、3日間のトリのラインナップを見てみたときにロックよりもヒップホップの割合が勝っているから。この背景には「ロックとヒップホップの逆転現象」という世界的なトレンドが関係しています。

ここでいう逆転とは、音楽売上のこと。2017年のアメリカでは史上初めてヒップホップやR&Bがロックの売上を超え、最大の音楽ジャンルとなった1年でした。Spotifyのグローバルチャートに目を向けてみても、常に上位はヒップホップ勢です。世界的に見てヒップホップは今、最もクリエイティブかつコマーシャルな季節を迎えているのは間違いありません。その熱を見事に反映したのが今年の〈フジロック〉なのです。

 

IMG_7717 日本の「ロックフェス」が塗り替えられた瞬間

とはいえ、日本ではまだまだロックのほうが売上的にも認知度的にも上。SNSでは「全然ロックフェスじゃないじゃん」「今年はスルーかな」と呟く往年のフジロッカーも見かけました。

そんなこともあり、今年の〈フジロック〉がもしも盛り上がらなかったら……と心配しましたが、そんなことは杞憂でした。2日目のトリ、ケンドリック・ラマーがメインステージに上がるころ、広大な芝生の地面が見えなくなるほどの観客が集まり、後方までぎっしりの大入り。圧巻のラップがバシバシキマるたびに、「手を挙げていない人、いないのでは?」と思ってしまうほどのものすごい熱量のハンズアップが。フジロックに行き始めてかれこれ10年、異例の光景でした。

ケンドリック・ラマーは今年のマーヴェル映画『ブラックパンサー』の音楽を手掛けており、アンコールでは同映画のエンドロールで流れる「All The Stars」も披露していました。同映画がアメリカ国内における累計興行収入の歴代3位となる特大ヒットを記録したことも、今の世界的なヒップホップ人気を象徴する出来事の一つかもしれません。

IMG_7831

ライブ配信解禁によって日本のフェス体験が変わった

今年の〈フジロック〉は初めてライブ配信が解禁されたことによって、スマホ片手に「自宅から参加」できるようになったのも大きなトピックです。YouTubeなどを用いたフェスのライブ配信は、アメリカの〈コーチェラ〉やイギリスの〈グラストンベリー〉といった人気フェスがすでに何年も前から始めていますが、まさか日本のフェスを配信で楽しめるようになるとは! 筆者も1日目のサカナクションをライブ配信で観ましたが、山並に沈む夕日と心地よい音楽が溶け合った〈フジロック〉ならではの光景を、スマホ越しからも体験することができました。

一方で、ライブ配信に組み込まれたチャットでは、荒らしのコメントによって不快な思いをした人も多かったそうです。「何このバンド、どこがいいの?」といった観る者を興ざめさせてしまうネガティブなコメントが実際に書き込まれていたようで、オープンな空間の中でどのような対策を取ることができるのか、来年以降の課題となりました。

台風によってテントを吹き飛ばされ、寝床を失った人もいるほど過酷さも異例だった今年の〈フジロック〉。しかし、そんな異例尽くしの〈フジロック〉が今後日本の新たなスタンダードになるのかもしれません。

加藤綾一(かとう・りょういち)

エディター/ライター。音楽制作会社、広告代理店での勤務を経て、エクスライトに入社。以前は音楽ライターとして雑誌・インターネット媒体で執筆も。現在はSNSやオウンドメディア運用などを中心に編集/ライティングに携わる。

PAGE TOP