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HIGASHI TOKYO

Text by SUI TOUYA

街をまるごと巻き込んで
つながる、はじまる「現代の公民館」

台東区・入谷に「SOOO dramatic!(ソードラマチック)」というイベントスペースがある。人が集まり交流を深めるなかで、「ドラマチック」なムーブメントが生まれることを目指す、いわば“現代の公民館”だ。どんなイベントを開催しているの? 東東京の面白さって? スペースの企画・運営を担う、まちづくり会社ドラマチックの今村さんに尋ねてみた。

「いま、東東京が面白い!」。そんな噂を耳にし始めたのは2010年前後のことで、あれよあれよという間にコーヒーショップやライフスタイルショップが集う「旬なエリア」に変化していった。注目が集まる以前から東東京に魅力を感じ、街の人たちをつなげる企画を仕掛けてきたのが、まちづくり会社ドラマチック代表の今村ひろゆきさんだ。いまや「東東京のムーブメントはこの人に聞け!」といわれる存在となった今村さん。現在関わっている企画や、東東京の魅力についてお話を伺った。

まちづくり会社ドラマチック代表 今村ひろゆきさん

まちづくり会社ドラマチック代表 今村ひろゆきさん

僕の仕事は「人を呼び込む仕掛けを考え、新たな交流を生むこと」

–台東区・入谷を拠点にして、どのような活動を行っているかお聞かせください。

今村:入谷にあるビルの1〜2階を使って、現代の公民館「SOOO dramatic!(ソードラマチック)」とコワーキングスペース「reboot(リブート)」の二つのスペースを運営しています。それぞれの場の特性を活かせるような企画を立てて、実際に形にしていくのが僕の仕事ですね。企画の種類には大きく二つのパターンがあり、一つは演劇の公演や街づくりに関する講座、クリエイターを集めて開催するマーケットなど、街の外側から集客を行うものです。

現代の公民館「SOOO dramatic!(ソードラマチック)」(Illustration by ofukurosan)

現代の公民館「SOOO dramatic!(ソードラマチック)」(Illustration by ofukurosan)

もう一つは、地域の人たちとの交流を深めるための企画です。たとえば、「入谷家の食卓」というイベントでは、参加者に近くの商店や好きなお店で買った“逸品”を持ち寄ってもらいます。地元の人が20人くらい集まって、それぞれが持ってきたもののストーリーを語ったり聞いたりしながら、家族のように食卓を囲んで楽しんでいますね。また、月に一度「good day入谷」という企画も開催しています。こちらは、入谷周辺のゲストハウスやカフェなど約20店舗で “特別なおもてなし”をご用意して、お客さんに周遊していただくイベントです。次回は2017年5月8日(月)から14日(日)の1週間で開催を予定しています。

月イチイベント「good day入谷」。SOOO dramatic!では子どもも楽しめるワークショップで“おもてなし”

月イチイベント「good day入谷」。SOOO dramatic!では子どもも楽しめるワークショップで“おもてなし”

そのほかに、「東東京ジャンクション」というトークイベントも開催しています。目的は、東東京エリアを拠点に面白い活動をしている人や、これから新しく何かを始めようとする人たちをつなぎ、交流する場を育むこと。今は東東京ジャンクションで出会った人たちと、新しいプロジェクトをどんどん立ち上げている最中ですね。

トークイベント「東東京ジャンクション」

トークイベント「東東京ジャンクション」

–地域の人が個人的な目的のためにスペースを活用することもありますか?

今村さん:最近では、幼稚園の保護者の方がお子さんの送別会や誕生日パーティーを開くために予約をしてくださったり、近くのダンス教室の発表会の会場として使われたりすることもありますよ。地域の人たちが気軽に使えるスペースとして、徐々に浸透してきている気がします。

お手本にしている個性的な3つのスペース

–スペースの運営や企画の立案を行うにあたり、何か参考にしているものはありますか。

今村さん:実は、東東京にはユニークな施設がたくさんあるんです。そのオーナーの方たちと話をする機会も多く、そうした施設から学ぶ点は多いですね。

たとえば、月島には「セコリ荘」というコミュニティースペースがあります。表向きは「おでん屋さん」なのですが、実はものづくりやファッション関係の人たちが多く出入りしています。でも、それを前面に押し出すと間口が狭くなってしまいますよね。だから、入口はおでん屋さんにして、色々な人が気軽に入れるようにしています。お客さん同士が話をするうちに「その商品はうちでも扱っています」などビジネスの話に発展していくこともあるそうです。食を介して色々な業種の人がつながるやり方はすごく面白いし、参考になります。おでん屋さんというのも、下町っぽい雰囲気があっていいですよね(笑)。

コミュニティースペース「セコリ荘」

コミュニティースペース「セコリ荘」(Illustration by ofukurosan)

また、谷中には“最小文化複合施設”を謳う「HAGISO」というスペースがあります。築60年のアパートを改修した施設で、1階のカフェやアートギャラリーではさまざまなイベントが開催されています。僕が注目しているのは、建築の専門家をゲストにお招きして、建築に関する企みについて語り合う「建築夜話」というイベントです。一つの分野を深く掘り下げていくと、知識を蓄積したりコミュニティーを広げたりすることにもつながり、主催者にとっても参加者にとってもメリットが大きいのでいいなと思いますね。

“最小文化複合施設”「HAGISO」

“最小文化複合施設”「HAGISO」(Illustration by ofukurosan)

日暮里と上野の中間地点には「上野桜木あたり」という複合施設があります。古い建物3棟からなり、そこにビアホールや塩とオリーブオイルの専門店など小さなお店が入っています。上野桜木あたりは、特に夜がすばらしい! メインの通りから1本入った暗い路地裏を進むと、路面に灯りが洩れてくるんです。その灯りのなかでみんながおいしそうにビールを飲んでいる光景は、本当にすてきですよ。長く使われてきた建物だからこそ醸し出せる気配みたいなものがあって、温もりが感じられます。入谷周辺にも古い建物がたくさんあるので、その存在をきちんと伝えていくことが街の価値になる気がしますね。

複合施設「上野桜木あたり」(Illustration by ofukurosan)

複合施設「上野桜木あたり」(Illustration by ofukurosan)

色々な人が自分の持っている才能を発揮できるよう、後押ししていきたい

–東東京、掘れば掘るほど面白いですね! そもそも、今村さんが東東京を拠点にしようと思ったのはなぜだったのでしょうか。

今村さん:以前は目黒区大岡山に住んでいました。その頃から、次に引っ越すときは暮らしも仕事も遊びも一つの街でできたらいいと思っていたんです。色々なエリアを見て、東東京なら理想が叶うかもしれないと思いました。物件を探したところ、浅草に元サンダル屋だった木造2階建てが見つかりました。2カ月ほどかけてリノベーションを行い「LwP asakusa(ループアサクサ)」というシェアアトリエ兼イベントスペースを始めることにしたんです。今から7年前、2010年のことです。

-当時はまだ東東京に知り合いが少なかったと思いますが、ご自身の活動をどのように広めっていったのでしょうか。

今村さん:最初は、浅草周辺で面白い活動をしている人たちとつながりをつくっていきました。インターネットや雑誌を見て「面白い!」と思った人にアポイントをとって会いにいっていましたね。当時、台東区では街の人たちがつながれるようなイベントが多くありませんでした。一方で、川向こうの墨田区では、2000年頃からアート活動をしている人たちを中心にしたネットワークができていた。「いつか台東区も横のつながりができて、皆で街を盛り上げられたら」と考えながら、知り合った人たちをゲストに招いて、トークイベントなどを開催していました。

–「皆で街を盛り上げられたら」という夢は、その後実現したのでしょうか。

今村さん:まさに今、取り組んでいる真っ最中です。トークイベントなどを続けるなかで、浅草の地場産業である皮革や靴関係の企業の人たちとつながる機会がありました。街の状況について話をしているうちに、浅草でものづくりのイベントを開催しよう、街を盛り上げようと話が広がっていって、2013年にものづくりフェスティバル「浅草A-ROUND(エーラウンド)」を立ち上げることになりました。現在は年に2回、浅草の靴の工場を巡るツアーを行ったり、ものづくりをテーマにしたセミナーを開いたりしています。靴のメーカーや革の工場、浅草を拠点にしているクリエイターなど、年を追うごとに協力者が増えているので、さらに多くの人を巻き込んでいきたいです。次回は2017年4月21日から23日で浅草のものづくりを満喫できるツアーやワークショップ・セミナーを開催します。

浅草A-ROUNDが企画した「革&靴“凄技”工場めぐりバスツアー」の一幕

浅草A-ROUNDが企画した「革&靴“凄技”工場めぐりバスツアー」の一幕

—-さまざまな企画を同時に手掛けている今村さんのコアにはどのような思いがあるのでしょうか。

今村さん:東東京に住みはじめた2010年から、皆が活動の拠点にできるような「場づくり」を続けてきました。それは、やりたいことに取り組める人が増えたらいいとずっと考えてきたからです。僕は大学卒業後に大手電機メーカーに入社して、「自分には何か才能があるはずだ」と思っていましたが、当時はそれを発揮できる機会があまり多くありませんでした。そのときのモヤモヤした感じがけっこう辛かったので、イベントやスペースをうまく利用しながら、色々な人が自分の持っている才能を発揮するための後押しをしていきたいと思っています。

今年(2017年)からは、千葉県習志野市の公民館の運営に携わることが決まっています。公民館を媒体にして、街の人たちをつなげる企画立案や、活動したい人の背中を押すアドバイザーとしての役割を担っていく予定です。「本物の公民館」を舞台にして、何ができるか非常にわくわくしています。

今村ひろゆき(いまむら・ひろゆき)

まちづくり会社ドラマチック代表

1982年生まれ。千葉県出身。大手IT電機メーカーでソリューション営業、街づくりコンサルティング企業にて商業施設のプロデュースなどを経験した後、2010年にまちづくり会社ドラマチックを設立。街の商店やクリエイターと関係性をつくりながら街を盛り上げる「小さなまちづくり」をモットーに、ビル型共同アトリエ「インストールの途中だビル」「reboot」や、現代の公民館「SOOO dramatic!」、地域を巻き込んだイベント「中延EXPO」「good day 入谷」「浅草エーラウンド」などの企画・運営を行っている。東東京の魅力を伝えるWEBサイト「東東京マガジン」編集長。

東谷好依(とうや・すい)

1986年、北海道生まれ、埼玉県育ち。スポーツから製造業まで幅広い分野をテリトリーにする雑食系ライター。現在、コーヒーマシンブランド「PASSIONE」のWEBサイトにて、“情熱的な仕事人”に迫るコラムページの編集・執筆を担当。フィギュアスケートを中心に1年がまわっているため、冬になると活気づく。

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