編集者の視点|オウンドメディア

2024.11.8

オウンドメディア 採用コンテンツ ソリューション

採用型オウンドメディアとは?その目的と効果につながる体制構築のポイントを解説

近年、人材不足や働き方の多様化といったビジネス環境の変化を受けて、企業の採用活動は年を追うごとに重要視されつつあります。企業の採用課題の解決策として密かに注目されているのが、採用に特化したオウンドメディアです。自社で立ち上げるオウンドメディアは、「採用型」「広報型」「マーケティング型」など目的別に分類して戦略的に運用することで、社内での位置づけが明確になり、評価指標の設定や社内外の関係者の目線合わせも容易になります。

そこでこの記事では、採用型オウンドメディアにテーマを絞り、その目的や具体的なコンテンツ例、制作体制の構築ヒント、および効果測定方法について解説します。

採用型オウンドメディアとは?

採用型オウンドメディアでは、新卒/中途/管理職の採用検討層に向けて企業の魅力をさまざまな角度から発信し、求職者とのマッチングの質を高めることで、応募数の増加や入社後の定着率向上を目指します。自社運営の採用施策としては、年度ごとの新卒募集や通年の中途募集を目的とした「採用サイト」が一般的ですが、採用サイトは一度公開したら頻繁には更新しない固定コンテンツが中心です。一方の採用型オウンドメディアは、コンテンツを継続的に発信する「メディア」の形を取りながら、採用候補者とのエンゲージメントを高める施策であるのが特徴です。

採用型オウンドメディアを立ち上げるのは人事面の経営課題を重視する下記のような企業で、その属性はさまざまです。

  • 急成長中の企業
  • イノベーション人材の短期採用を急務とするスタートアップ企業
  • 説明の難しい専門的な職種が多い企業
  • 転勤や移住を前提とした採用を検討する企業
  • 独自色の濃い企業文化のため、入社前に応募者と自社との相性を慎重に見極めたい企業

多くの場合、採用型オウンドメディアは人事部門が主導して立ち上げ・運営にあたりますが、近年では経営企画・広報部門・現場の社員らを巻き込んで、全社的にメディアの運営をバックアップする企業も増えています。

採用型オウンドメディアの代表的なコンテンツは、社員・人事担当者のインタビュー記事、職場環境・社内の取り組みについての紹介記事、社員のキャリアパスや成長ストーリーの紹介記事など。「人」「仕事」「組織文化」にスポットライトを当てるものが中心です。

採用検討層に加え、現在は応募を考えていない潜在層や企業と関わりのあるステークホルダーなど、読者ターゲットを広く設定しているのも採用型オウンドメディアの特徴といえます。メディアを運営する企業からは、在籍社員の文化浸透やロイヤルティ向上など、社内向けの副次的な効果も期待できるとの声が多いようです。

採用型オウンドメディアの目的

採用型オウンドメディアは、喫緊の採用課題を解決する目的以外に、中長期的に組織変革を進める「人的資本経営」に関連づけて立ち上げられるケースもあります。人的資本経営においては、採用をはじめとした「人事施策」を「経営戦略」と両輪で考えるのが基本です。そうした文脈において、採用型オウンドメディアは経営戦略を実現するための重要なツールと位置づけられ、その目的は以下の4つに分けることができます。

①採用検討層の拡大

新規/中途/管理職の採用検討層に向けた自社の魅力発信を通じて、応募数を増やすこと。いかにしてターゲットにアプローチし、採用の母集団を形成するかが鍵となります。

②マッチングの質の向上

自社が求めるスキルを有する人材、企業文化にコミットできる人材を獲得し、採用後の定着率を向上させること。求職者が入社したのち、希望する労働条件や仕事内容とのズレを感じたり、企業文化や社内の人間関係になじめないといったミスマッチが起こるのを防ぐのが課題となります。

③自社採用比率の向上

転職サイトやエージェント経由の採用よりも自社採用比率を向上させ、採用コストを削減すること。

④インナーブランディング

社内人材を取材対象に取り上げることで、個々の社員のモチベーションを高めること。同時に、身近な社員や同僚の取材を通じて、企業文化のさらなる浸透を目指すこと。

採用型オウンドメディアのコンテンツ例

●パーパス系コンテンツ

採用ターゲットに向けて、自社の理念やバリュー、今後の展望を発信。

  • (例)
  • 自社のパーパスを、社長と社員数名が語り合う対談コンテンツ
  • 自社製品・サービスの品質へのこだわりについて、関係部門のベテラン社員が語るインタビュー
  • 企業文化の特色が反映された表彰制度の紹介と、表彰式のレポート記事

人的資本経営の観点からも、自社のパーパスをいかにアピールするかは最重要テーマです。パーパス系コンテンツでは、社員の仕事ぶりや仕事に対する価値観を通して自社のパーパスを伝えることが、読者の共感につながります。

●ピープル系コンテンツ

現場スタッフの生の声を通して、そこで働く人の個性やキャリア、社内の人間関係とカルチャーを発信。

  • (例)
  • 責任あるポジションに抜擢採用された社員に、志望の動機と職場のリアルをインタビュー
  • 社員の出張に同行し、商談の一部始終を追った2日間の密着レポート
  • 「提案力」と「絆」をテーマにした、お客様企業と担当社員の対談

一般的な採用サイトのピープル系コンテンツが、ともすると耳障りのいい定型発言になりがちなのに対して、採用型オウンドメディアでは、社員の声をいかにリアルに伝えるかが鍵となります。企業が抱える課題や欠点をも、率直に開示する正直さを意識したいところです。

●ビジネス系コンテンツ

具体的な事業内容や個々のプロジェクトの紹介を通して、仕事環境やここで働くことの醍醐味を発信。

  • (例)
  • 「新卒社員のキャリアパスの広がり」をテーマに、タイプの異なる複数社員にインタビュー
  • 業界未経験者の転身ストーリーを、日々の業務内容を紹介しつつ記事化

ビジネス系コンテンツでは、自社にいることで何が得られるか、どのような成長ができるのかを、さまざまな職種・階層の目線に立ちながら明確に提示することが求められます。説明の難しい専門職種でも、「社員の目」を通すことで読者は思い描きやすくなります。

●ベネフィット系コンテンツ

待遇や優遇制度など労働環境の紹介を通して、自社の働きやすさをアピール。

  • (例)
  • 「女性にとっての働きやすさ」をテーマにした、女性社員による座談会。登場人物は管理職・時短勤務中の中堅社員・キャリア3〜4年目の若手社員など
  • 外国籍の社員インタビューを通して、ダイバーシティを推進する自社の現在地と支援制度を紹介

その企業での「働きやすさ」は、社員の属性・階層・職種など、立場によって変わるものです。ベネフィット系コンテンツでは、それぞれの人の働きやすさを複数の立場から取り上げることで、職場環境の向上に対する企業の意思を示すことができます。

採用型オウンドメディアでは、複数年という長期にわたって施策を講じていきます。そこで扱う記事が似たものにならないよう、記事のラインナップにバリエーションをもたせ、各記事の狙いと記事品質をコントロールしてメリハリをつけるよう配慮が必要です。ネタ切れや記事企画のバリエーションを考慮して、運営にあたりましょう。

採用型オウンドメディアの制作体制

前述したように、採用型オウンドメディアでは複数年にわたる長期施策が前提となるため、メディア立ち上げ時やリニューアルなど体制見直しのタイミングでは、長期間の安定運用を見越した体制を検討したいところです。オウンドメディアの制作体制は、一般的に「内製」「外注」「ハイブリッド型」に分かれますが、採用型オウンドメディアのコンテンツは「採用検討層に向けて組織の価値や発見を伝える」という点で、外部の視点が特に重要になります。そのため外注にウェイトを置いた制作体制、あるいは外部目線を入れた体制構築が望ましいといえるでしょう。

①社内中心で運用するケース

編集やライティング、ビジュアル制作などの全工程を自社スタッフで行う方法。経営企画・人事部が主導するケース、コンテンツ制作に慣れた広報部を巻き込むケースなど社内体制のバリエーションはさまざまありますが、「社員ブログ」などを通じたリアルな声の発信であれば、ミニマム体制で運営することも可能です。

内製の最大の利点は、制作コミュニケーションをスムーズに進められること。企業文化の一貫性を保ちながらコンテンツを制作でき、企業の独自性や内部の価値観を反映させやすいのが特長です。

その一方で、内製だと自社をひいき目に見たり、内部目線に偏りすぎて自社の魅力を見失ったりするリスクもあります。また、社内調整と制作準備を並行するのは想像以上に稼働がかかり、最初に決めた更新本数をキープできない事態も想定されるので、注意が必要です。

②外部委託中心で運用するケース

専門的なスキルやリソースを持つ外部編集会社に依頼する方法。外注する最大の利点は、専門知識や経験を持つプロフェッショナルを活用することで、社内の人間にとっては当然すぎて気づかない価値や魅力を第三者目線で発見し、それをコンテンツの仕上がりに反映できる点です。

具体的には同じ素材・同じ取材対象であっても、ストーリーテリングの力によってより深い読み応えを実現できたり、強弱のある話題の取り上げ方や編集切り口の工夫により、訴求ポイントを際立たせることが可能となります。

また、外注する場合は社内リソースをより戦略的な業務に回すことができ、俯瞰的な立場からメディア全体を統括できるメリットも。人選やコンテンツ企画の切り口立案は社内で行い、制作は外部の編集会社に任せることで、メディア戦略やコンセプトの軸を通しつつ、採用者の目線に近い読み応えのあるコンテンツを担保できます。

③社内と外部委託で棲み分けるケース

内製と外注を組み合わせた「ハイブリッドモデル」で、コンテンツの性質ごとに社内担当部門・外部編集会社で制作を分担する方法です。

ハイブリッドモデルの利点は、「リアルな空気感や声を発信する社員ブログ、稼働の少ないプレスリリースのリライトは内製」、「外部視点を大切にしたい取材コンテンツ、情報ソースの正確性やプロの書きぶりにこだわりたい記事は外注」など、社内のリソースを有効活用しつつ、外部の専門性・客観性を取り入れられる点です。

内製と外注を組み合せるスタイルにより、社内リソースが不足したときに外注比率を上げたり、予算が不足した際に内製に切り替えるなど、柔軟な運用体制を敷くことができます。また、すべてを外注に頼る場合に比べてコストを最適化することも可能です。オウンドメディア施策のKPIになることの多い「更新頻度」を保持する方法としても一考に値するでしょう。

採用型オウンドメディアの効果測定

採用型オウンドメディアの運営においては、経営戦略と足並みを揃えて継続施策を講じていく姿勢が重要です。コンテンツは特効薬ではないので、長期的視点で成果を測りましょう。

指標となるのは採用サイト、応募フォームへの送客などの「コンバージョン率」のほか、「PV(ページビュー)数」「UU(ユニークユーザー)数」「セッション(訪問回数)数」などの基本的な定量データです。

そのほか、「よく読まれる記事ランキング」「読了率」「回遊率」「離脱率」から読者の反応を探って、コンテンツの品質向上やサイト内のナビゲーション適切化のヒントにしたり、「SNSでのリアクション・言及数」からメディアが狙い通りに機能しているかもウォッチしたいところです。また、「オーガニック検索の流入数」「検索順位」から、SEO(検索エンジン最適化)の効果を測定することも大切なポイントです。

「メディア戦略の明確化」+「読者目線に立った臨場感の追求」が成功の鍵

社会構造の変化に伴う人材不足により、就職の構図が根本から変わりつつある今の時代、優秀な人材の獲得に貢献する採用型オウンドメディアの意義は大きくなりつつあります。採用型オウンドメディアは、求人サイトなど外部メディアの制約を受けずに、自社の採用方針や社風、価値観を自由な形で伝えられるのが最大のメリット。そのメリットを生かして効果を最大化するには、企業の経営戦略・採用戦略を踏まえながらメディア戦略を定め、目的をぶらさずに運営することが肝心です。同時にコンテンツ制作においては、自社の素顔と魅力をさまざまな角度から臨場感をもって伝えることで、ターゲットの心をつかむ工夫をしたいところです。

文:エクスライト編集部

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