編集者の視点|オウンドメディア

2024.11.12

オウンドメディア 採用コンテンツ ソリューション

広報型オウンドメディアとは?その目的と効果につながる体制構築のポイントを解説

オウンドメディアは、企業が広告出稿やパブリシティなど外部メディアに依存せず、自社のメッセージをみずからの戦略に沿って継続的に発信できる媒体です。オウンドメディアにはさまざまな分類がありますが、本シリーズでは「広報型」「採用型」「マーケティング型」など、目的別に分類して解説していきます。目的別に分類することで、社内でのメディアの位置づけを明確にできる、評価指標を設定しやすい、社内外の関係者の目線を合わせやすいなどの利点が得られるためです。

この記事では「広報型オウンドメディア」にテーマを絞り、その目的と具体的なコンテンツ例、制作体制の構築ヒント、および効果測定方法について解説します。

広報型オウンドメディアとは?

そもそも「広報」とは、組織の持続的な成長・発展のために、自社の理念やビジョン、事業の方針と活動、社会的取り組みなどを広く社会に伝えて共感を得ようとする活動のことで、「コーポレート・コミュニケーション」とも呼ばれます。「広報型オウンドメディア」は、この広報活動に特化した自社メディアを指します。企業のメッセージを伝える重要なツールとして位置づけられ、多くの場合、経営企画や広報部門が所轄部署となって立ち上げ・運営にあたります。

広報型オウンドメディアの読者ターゲットは、企業や組織と接点を持つあらゆる関係者、つまり社内外のステークホルダーで、以下のように幅広いのが特徴です。広報型オウンドメディアにおいては、この多岐にわたるステークホルダーの意向・期待をふまえたきめ細やかなコンテンツ発信が求められています。

  • 社外のターゲット
    顧客、消費者、株主、投資家、取引先、メディア、学生、採用候補者、地域住民 など
  • 社内のターゲット
    社員とその家族

広報型オウンドメディアの代表的なコンテンツとしては、企業理念・ビジョンに関する記事、社会貢献活動や環境への取り組みに関する記事、企業イベントのレポート記事などが挙げられます。「企業価値とパブリックイメージの向上」という広報が担う役割上、こうしたコンテンツはスポットや年間単位の施策ではなく、複数年にわたる長期的なコミュニケーション戦略のもとで立案されることがほとんどです。

広報型オウンドメディアの目的

近年、多くの企業は、事業活動が複雑化するとともに、事業領域も広範囲に拡張する傾向にあります。そうした変化に伴って、広報を「経営」の重要な機能として位置づける企業が多くなり、広報型オウンドメディアにおいても「事業やブランドに関する経営課題をいかに解決するか」という視点が求められています。

「経営課題の解決」という広報型オウンドメディアの大目的を紐解くと、以下の5つに分類できます。

  • 企業認知
    企業の認知度を上げること
  • イメージ向上/ブランディング
    企業のブランドイメージを正しく伝えること
  • ファンづくり
    企業やブランド・製品に共感し、ファンになってもらうこと
  • コアバリュー啓蒙
    商品や成分など、事業のコア技術を知ってもらうこと
  • パーパス浸透
    企業の存在意義・社会的意義を理解してもらうこと

通常、企業の情報発信では「社外向け」と「社内向け」が明確に区別されることが多いですが、広報型オウンドメディアにおいては、「社外向けの発信」が「社内向けコミュニケーション」も兼ねているのが特徴です。自社の価値を魅力的な切り口で読者に伝えるための工夫はまた、社員の学びの深化やエンゲージメント向上の面でも一役買っています。

広報型オウンドメディアのコンテンツ例

●経営情報に関するコンテンツ

パーパス/ESG(環境・社会・ガバナンス)観点に立ち、自社の経営方針やビジョンを発信。

  • (例)
  • 「パーパス経営」や「人的資本経営」などビジネストレンドを意識したテーマで、経営トップにインタビュー(年度替わり/代替わり)
  • 「DX×自社事業」「AI×自社事業」などのテーマで、社内のキーパーソンによる座談会(中期経営計画発表時/新サービスローンチ時)
  • 入社式や株主総会などのイベントレポート

経営情報に関するコンテンツでは、ただ漫然と記事をまとめるのではなく、社会の流れやステークホルダーに残したい印象から逆算して、課題解決型でストーリーを設計するのがポイントです。

●ブランディングに関するコンテンツ

著名人・有識者・インフルエンサーを起用して、ブランドのファンを育成。あるいは、「読者へのお役立ち」を第一に考えた、信頼性の高い情報を発信。

  • (例)
  • 自社製品イベントに出演したアスリートへのインタビュー
  • インフルエンサーと協力して開発した新サービスの舞台裏をレポート
  • 製品に紐づかない生活にまつわるノウハウ情報を、専門家による監修で記事化

製品に関するブランディングコンテンツは、広報型オウンドメディアでしかできない魅力の深掘り記事が効果的。一方、製品に紐づかないブランディングコンテンツは、中立的で信頼性の高い情報であることが基本です。いずれの場合も、「読者が知りたい情報」と「自社が伝えたい情報」のバランスに配慮しながら制作するのがポイントです。

●ソーシャルアクションに関するコンテンツ

自社のサステナビリティへの取り組みを、読者目線でコンテンツ化。

  • (例)
  • 「SDGs×自社事業」「カーボンニュートラル×自社事業」をテーマに、現場で働く社員にインタビュー
  • 「サーキュラーエコノミー」の実践と今後の課題をテーマにした、有識者×自社役員の対談
  • LGBTQ+をテーマにした社内ウェビナーの模様をレポート

自社の取り組みをただ一方的に発信しても、読者の興味は引きづらいものです。「社会的なテーマ」と「自社の取り組み」の接点を探りつつ、それを語るにふさわしい社内外の人物をアサインすることが、読者目線に寄り添うための近道といえます。

●コアバリューに関するコンテンツ

自社の価値の中核となるコア技術について、広く啓蒙。

  • (例)
  • 子どもなど外部の一般人がコア技術についてイチから学ぶ、研究所見学コンテンツ
  • BtoB産業のコア技術が、納品先企業で活用されている様子を取材して記事化
  • その道の社外専門家による最新技術の動向をとらえた連載コラム

企業のコア技術は専門性が高く、多くの人にとって理解しづらいため、丁寧な解説と読者目線に立った話題の展開が不可欠。著名な外部専門家を起用することで、社会全体から見たコア技術の重要性を印象づけるのも一手です。

広報型オウンドメディアの制作体制

広報型オウンドメディアでは、複数年という長期にわたって施策を講じていきます。そのためメディア立ち上げ前、あるいはリニューアルなど体制見直しのタイミングでは、長期間の安定運用を見越した体制を検討することをおすすめします。コンテンツの制作体制は、主に「内製」か「外注」のどちらかに分かれ、「内製」と「外注」のハイブリッド型も考えられます。

①社内中心で運用するケース

編集やライティング、ビジュアル制作などの全工程を自社スタッフで行う方法。既存広報部メンバーを中心とした運用、インハウスエディターを新規採用した運用、社内横断でチーム編成するケースなどが考えられます。

内製の最大の利点は、制作コミュニケーションをスムーズに進められること。また、社内アセットを活用してブランドコミュニケーションの一貫性を保ちながらコンテンツを制作できること、企業の独自性や内部の価値観を反映させやすいこともメリットです。

一方、広報部がチームを主導する場合、イベントや株主総会などの広報施策で多忙になる時期にリソースの確保が難しくなることが考えられます。また、社内調整と制作準備を並行するのは想像以上に稼働がかかり、最初に決めた更新本数をキープできない事態にも注意が必要です。

②外部委託中心で運用するケース

専門的なスキルやリソースを持つ外部編集会社に制作を依頼する方法。この体制の利点は、専門知識や経験を持つプロフェッショナルを活用できることです。特に、企業内部に十分なリソースがない場合には、外部パートナーを活用することで質の高いコンテンツを効率的に制作できます。また、著名人や有識者を起用したコンテンツをまとめるスキルは、通常の広報スタッフが持ち合わせていないこともあります。そのような場合は、専門チームに企業のブランドや品格にふさわしい記事を依頼することで、より訴求力が高く印象に残る発信が可能になります。

さらに、社内リソースをより戦略的な業務に集中させ、俯瞰的な立場からメディア全体を統括できるメリットもあります。経営陣はもちろん、社内外の多種多様なステークホルダーに配慮が必要な広報部はブレーンとしての役割を果たし、外部編集会社は記事の狙いを反映した読み応えのある記事を制作する。このような役割分担により、広報戦略をコミュニケーションに丁寧に落とし込む最適な体制を築くことができます。

③社内と外部委託で棲み分けるケース

内製と外注を組み合わせた「ハイブリッドモデル」では、コンテンツの性質に応じて社内担当部門と外部編集会社が制作を分担します。

ハイブリッドモデルの利点は、社内リソースを効率的に活用しつつ、外部の専門性と客観性を取り入れられる点にあります。具体的には、社内事情や組織文化の深い理解が求められる記事や、広報部が主導するリリースは内製で対応し、著名人や専門家の起用が必要な記事や、読者目線でやわらかく情報を表現する記事は外注する、といった役割分担が可能です。

また、広報型オウンドメディアは自社目線に陥りやすい傾向がありますが、必要なポイントで外部目線を取り入れる体制を組むことで、読者に寄り添った偏りのないコンテンツを制作できるなど、多くのメリットが得られます。

運用体制を決める際には、事前に業務フローとタスクを洗い出すことが重要です。プランニング、社内調整、データ分析、CMS更新などの社内マターと、「取材」「執筆」「撮影」など外部に委託可能なタスクを明確に分け、社内スタッフのリソースやコンテンツ更新頻度を考慮しながら最適な運用方法を選択しましょう。

広報型オウンドメディアの効果測定

一般的にオウンドメディアは、成果の数値化が難しいといわれています。そういった理由から、短期的な成果目標を求めて、あるいは時流に乗って、確たる戦略がないままメディアを立ち上げて後々行き詰まったり、難易度の高いコンバージョンを設定して計画倒れになるケースも見られるようです。

広報型オウンドメディアの運営においては、長期的な戦略に基づいて継続施策を講じていく姿勢が欠かせません。そのため持続可能な効果測定指標を設定することが、メディア継続のための大切な条件となります。

指標となるのは「PV(ページビュー)数」「UU(ユニークユーザー)数」「セッション(訪問回数)数」などの定量データに加えて、他のデジタルメディアに遷移したか、記事が話題づくりのきっかけになったか、ブランドのファンを増やすことができているかなど。記事群の目的ごとに、定量・定性両面から成果指標を設定することで、バランスのいい測定が可能になります。

「長期的な視点を持つこと」+「質にこだわった発信を行うこと」が成功の鍵

実際に広報型オウンドメディアを運営し始めると、アクセス数がなかなか伸びない、定量的な成果が見えづらく制作スタッフのモチベーションが維持しにくいといった課題に直面するかもしれません。何より重視したいのは、「企業価値の向上や経営課題の解決に貢献しているか?」という長期的な課題を見失わずに、コンスタントに施策を講じ続ける姿勢です。そのうえで、読者の反応や時代に合わせてこまめにコンテンツをチューニングしながら、質にこだわった発信を心がけることで、メディアの影響力を徐々に高めていくことができます。

文:エクスライト編集部

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