2024.10.18
ソリューション オウンドメディア
オウンドメディアの運用体制:外部編集会社の選定基準
オウンドメディアの運営に外部編集チームを加える場合、自社の戦略を理解し、ビジネス文脈に即したコンテンツを作成できる編集会社を選ぶことが、効果的なメディア運営の鍵となります。
本記事では、企業発信の理解度、コンテンツの品質維持、安定した運用を支える体制、そして選定の決め手となる実績について、外部編集会社を選定する際の具体的な基準を詳しく解説します。
目次
1. 企業発信を理解しているか
オウンドメディアは、一般的なWebメディアとは異なり、企業の戦略や目的を背景に運営されます。読者にとっては一般のWebメディアと見分けがつかないかもしれませんが、オウンドメディアは企業のメッセージを伝える重要なツールです。そのため、編集会社が企業の目線を理解し、目的に応じたコンテンツ制作をできるかが、選定の際に重要なポイントになります。
たとえば、出版や新聞、放送メディアに携わる編集会社は、一般的な読者に向けた情報のまとめ方に長けていますが、企業発信に不慣れな場合があります。逆に、広告や広報に強い編集会社は、企業の戦略や課題に応じたコンテンツ制作に精通しているものの、オウンドメディアで求められる読者目線を欠くリスクがあります。
一方、デジタル関連の編集会社の場合、企業発信の案件実績が十分かどうか確認する必要があります。SEO編集に限定した会社やSNSに強い会社、toC向けの記事が得意な会社は、ビジネステーマや企業の課題解決視点での記事制作が難しい場合があるからです。
どのような編集会社が適切か一概には言えませんが、企業の視点と読者の視点をバランスよく結びつけ、効果的にコンテンツを編集できる会社を選ぶことが重要です。
チェックポイント
- ✅企業戦略と目的をふまえたコンテンツ制作が可能か
- ✅中立的な情報提供と企業発信のバランスが悪くないか
- ✅クライアントワークの経験も豊富にあるか
2. ビジネス文脈に通じているか
オウンドメディアのコンテンツは、企業の経営課題やコミュニケーション戦略に直結していることが多く、これらに通じた編集会社と協力することが成功への近道です。たとえば、パーパス経営や人的資本経営、ESG、SDGs、DX、AIなど、現代のビジネス環境で重要なテーマに関する実績が豊富な編集会社であれば、コンテンツ制作をスムーズに進められる確率は高いといえます。
一方、採用やマーケティングに関連するコンテンツでは、仕事と人のストーリーテリングやセールスにつなげるためのライティングが求められます。報道メディアや雑誌編集を中心に手がける会社は、クライアントワークや課題解決型のコンテンツ編集に不慣れな場合があるため、そのあたりの対応力が十分かどうか見極める必要があります。
自社事業領域と編集会社の親和性も重要ですが、距離が近すぎると外部の視点を失い、バイアスがかかるリスクもあります。むしろ選定ポイントを、企業の事業領域やビジネス文脈を迅速にキャッチアップできるか、必要な知見を蓄積できるチームか、に置く方が健全といえます。
チェックポイント
- ✅現代のビジネステーマに関連した実績があるか
- ✅課題解決型のコンテンツ編集にしっかり対応できるか
- ✅幅広い案件に触れて客観性や知見を獲得しているか
3. コンテンツの品質が担保できるか
オウンドメディアの成功には、コンテンツの品質が不可欠です。その品質を支えるのが、編集者のディレクション力と書き手のライティング力です。企業発信を目的とするオウンドメディアでは、経営課題に基づくさまざまなテーマに対応する必要があるため、編集者には企画の背景や文脈を理解し、運営側と目線を合わせてライターの原稿を導き、定着させる能力が求められます。
一方、ライターには、テーマや業界に精通することが求められます。特に、経営トップや著名人へのインタビュー、取材に不慣れな社内スタッフを対象とするコンテンツでは、インタビュー力や現場の雰囲気づくりが重要な要素となります。また、適切なコンテンツ表現と高い執筆力も欠かせません。
さらに、専門性の高いテーマを扱う場合、その分野に精通したライターが不可欠です。たとえば、テクノロジー関連では科学や技術に関する深い知識が求められ、美容や医療分野では薬機法に関する知識やリスク回避を重視したテクニカルライティングが必要です。BtoB企業のコンテンツでは、事業理解と周辺テーマに対する知見が欠かせません。これらの要素が揃ったライターにより、質の高いコンテンツがもたらされます。
ただし、ニッチな分野では書き手の母数が限られることもあり、最適な制作事例を持つ会社も少なくなります。そのような場合には、発注側と編集会社で密にコミュニケーションを取り、原稿の方向性や品質について綿密にすり合わせることが重要です。事前に、こうした協力体制が整っているかを確認しておくと安心です。
また、大手企業では情報の正確性や社会的責任が一層求められます。炎上リスクを避けるためには、ファクトチェックや出典の記載方法に慎重な判断ができる編集会社を選ぶことも重要です。
チェックポイント
- ✅編集者とライターのスキルが十分か
- ✅テーマや業界に精通したライターがいるか
- ✅ファクトチェックと情報の正確性が担保できるか
4. 安定運用を維持する体制があるか
オウンドメディアは、編集方針やKPIに沿って計画的に運営されることが求められます。年間の運用スケジュールや月々の更新本数が決まっている場合、その計画の一部を編集会社が担うことになります。更新頻度に応じた編集者の増減が可能か、必要に応じたスキルセットを持つ編集者やライターを起用できるか、問題が発生した際にチームを再構築できる準備があるかは、安定運用の大切なポイントです。
また、コンテンツの更新頻度やプロジェクトの規模によって、必要な対応も変わります。たとえば、月に1~2本の更新なら小規模な体制でも十分対応可能ですが、展示会や株主総会、周年記念行事といった社内イベントに関連するコンテンツでは、より多くの記事が求められることがあります。こうしたニーズに応じて柔軟な対応ができるかも選定基準のひとつになります。
さらに、発注側と編集会社の間でスムーズなコミュニケーションを維持することも、安定した運用には欠かせません。共通のコミュニケーションツール(例:Slack、Teams、Backlog、Chatworkなど)を活用して進捗確認や連絡を効率的に行い、定期的な編集会議を通じて課題の共有や方針のチューニングを行うことで、より盤石な体制での運用が期待できます。
チェックポイント
- ✅更新頻度に応じた適切な体制を整えられるか
- ✅イレギュラーな対応にも柔軟に対応できるか
- ✅共通のコミュニケーションツールを使用できるか
5. フィジビリティを裏付ける実績があるか
外部編集会社を選定するうえで、過去の実績を確認することは最も手堅いアプローチといえます。類似するメディアの運用実績や、同一業種の案件実績があるかを見ることで、具体的な品質や信頼性を確認することができます。自社が特定業界で上位に位置する企業の場合、別業界のトップ企業をベンチマークにする選択肢もあります。また、東証のプライムやスタンダード、グロースなどの企業、グローバルブランド、ナショナルブランド、スタートアップなど、自社と同じカテゴリーに属する企業の実績も参考になります。
ただし、自社の業種や業界が特殊であったり、求める方向性がニッチであったりする場合、最適な案件実績を持つ編集会社が見つからないこともあります。その場合は、アサイン予定の編集者やライターのプロフィール、過去の制作実績を判断材料にすることができます。また、編集会社自体が持つ案件知見や併走力、共創力に期待する判断もあります。難易度の高いメディアを戦略的に成長させるためには、長期的なパートナーシップが不可欠です。編集会社の知見を活用しながら運用する形を模索することが成功への第一歩になります。
チェックポイント
- ✅類似メディアや業種での実績があるか
- ✅業界トップや上位企業の十分な実績があるか
- ✅体制構築能力に加えて助言も期待できるか
6. 体制の拡張性があるか
余裕があれば、オウンドメディアの将来的な拡張も視野に入れましょう。単純な拡張として、更新頻度の増加や記事ラインナップの追加、SEO施策との併用、SNSとの連動などが考えられます。さらに大きな方向性として、戦略的な拡張、規模とインパクトの拡大、表現バリエーションの多様化が挙げられます。
戦略的な拡張の例としては、商品開発との連携、リードジェネレーション、投資家向け情報の充実、インナーブランディング、グローバル展開などが考えられます。規模とインパクトの拡大を目指す場合、著名人・インフルエンサー・専門家の起用、アド運用などが有効な打ち手になります。
また、表現バリエーションの多様化は、読者のリテンションにもつながります。対談、座談、ストーリー形式の記事、ビジュアル表現(動画、マンガ、イラスト、図版やグラフの活用)、イベントレポート、ウェビナー、アンケート調査コンテンツ、ホワイトペーパーなど、多様な表現に対応できる編集会社を選ぶことで、メディアの成長をさまざまな面から支えることができるでしょう。
チェックポイント
- ✅SEO施策やSNS連動の拡張が可能か
- ✅著名人や専門家のキャスティング実績が豊富か
- ✅表現バリエーションの多様化に対応できるか
コンテンツの編集力がオウンドメディアの要(かなめ)となる
外部編集会社の選定は、オウンドメディア運営において成功の鍵となるポイントです。企業発信の理解、ビジネス文脈の把握、コンテンツの品質維持、安定した運用体制、実績の信頼性、将来的な拡張性といった選定基準をもとに、適切なパートナーを見つけることが求められます。編集会社を入れることは、リソースの補完だけでなく戦略強化にもつながり、サステナブルな運用体制とメディアのさらなる成長を後押しします。この記事のチェックポイントが、オウンドメディア運営を進める際の参考になれば幸いです。
文:エクスライト編集部