
2025.5.27
UXライティングとは? 他のライティングとの違いやユーザー体験を高めるコツを紹介
あらゆるビジネスにおいて、ユーザーとの接点をデザインするうえで「どんな言葉で伝えるか」は重要です。ECサイトやアプリ、SaaSなど、ユーザーとのコミュニケーションの質が製品・サービスそのものの評価を左右する時代になりました。
そこで、ユーザーにとって心地よく、スムーズな体験を生むためのライティング手法「UXライティング」について紹介。コピーライティングやウェブライティングとの違い、実際の活用例、そして効果を高めるためのポイントを分かりやすく解説します。
目次
UXライティングとは?
そもそも「UX」とは、User Experience(ユーザーエクスペリエンス)の略称で、「ユーザーが製品・サービスの利用を通して得られる体験」という意味。つまり「UXライティング」とは、UXの向上を目的としたライティング手法です。具体的にどのような領域で用いられているのかを見てみましょう。
UXライティングが用いられている領域
ウェブサイトやアプリなどのデジタルサービスにおいて、主に以下の部分でUXライティングが用いられています。
- CTAボタンの文言
- 入力フォームのテキスト
- エラーメッセージ(404ページ)
- ポップアップメッセージ
- プッシュ通知
- ツールチップ(注釈や補足情報)
- ヘッダー・フッター
基本的には、ユーザーが目的の行動を達成できるようにナビゲーションするのがミッションです。次の手順に進むためにテキストで誘導し、結果的に問い合わせや購入までが問題なく行えるようサポートするのがUXライティングのゴールといえるでしょう。
UXライティングとその他のライティングとの違い
UXライティングと混同されることの多い言葉として、「コピーライティング」と「ウェブライティング」があります。UXライティングとはどのような違いがあるのでしょうか。
コピーライティングとの違い
コピーライティングは、印象的なフレーズでユーザーの心を動かすライティング手法です。主に広告やマーケティングの分野で使用されます。商品の魅力をエモーショナルに伝えたり、企業のブランディングを強化したりすることが目的です。UXライティングと違って、分かりやすさよりも独自性や話題性が重要視されます。
ウェブライティングとの違い
ウェブライティングは、ウェブ上に公開されるすべてのコンテンツを対象としたライティングを指します。ジャンルは幅広く、ウェブ検索の上位を狙うSEO記事をはじめ、ニュース記事やインタビュー記事などが代表的。UXライティングと違って、ユーザーが求めている情報を届けることが目的です。
UXライティングが必要な理由とは?
2000年代初頭、iPhoneの登場を皮切りにスマートフォンの普及が加速し、誰もが簡単にウェブサイトやアプリを使えるようになりました。多くの情報や選択肢が与えられるなかで、デザインや機能だけでなく、使いやすさといった“UX”がデジタル製品・サービスの売上や評価を左右するようになったのです。
満足のいくUXが得られなければ、ユーザーは簡単に別の製品・サービスへ乗り換えてしまいます。そのため、新規ユーザーの獲得や既存ユーザーの継続のために、UXライティングが必要とされているのです。
UXライティングによって得られる効果とは?
UXライティングを強化すると、どのような効果が得られるのでしょうか。代表的な効果を2つ紹介します。
ユーザーを迷わせない
ユーザーがウェブサイトを訪れたり、アプリを使ったりするときには、必ず目的があるものです。優れたUXライティングは、必要な情報まで迷いなくたどり着けたり、手続きをスムーズに達成できたりと、言葉によってユーザーが目的を果たせるようにサポートし、快適な体験(=使いやすさ)を提供します。
ファンを増やす
ウェブサイトもアプリも、どんなテキストが表示されるかによってユーザーが受ける印象は大きく変わります。言葉によってブランドらしさやプロダクトらしさを伝えられれば、愛着心を持ってもらいやすくなるでしょう。困っている人が訪れるページであれば、安心させるような語り口調を選べば、安心感とともに信頼関係も築くことができます。
UXライティングのコツ6選
最後に、UXライティングのコツを6つ紹介します。これらを意識するだけで、製品・サービスのUX向上につながるでしょう。
一文は短く簡潔に
UXライティングでは、長文よりも短文の方が良いとされています。一文が短ければ、それだけユーザーの読むストレスが減り、次の行動へ移しやすくなるからです。文字が多い方がユーザーにとって親切だと考えがちですが、文字は必要最低限の量だけ表示させるようにするのがいいでしょう。
(例)
×:「あなたの知りたいキーワードを入力してください」
〇:「キーワードで探す」
視認性を高める
ひと目で見ただけで内容を認識できるような、視認性の高い文章表現を意識しましょう。文字とデザインを連携させたり、図・表、箇条書きなどを使用したりすると、ユーザーが情報をキャッチしやすくなります。
迷わせない表現
UXライティングでは伝えたいメッセージを明確にし、ユーザーが混乱してしまうような表現は避けるべきです。特に「二重否定」は意味を捉えづらいため、使用しないように注意しましょう。
(例)
×:「必須項目をすべて入力しないと先へ進めません」
〇:「必須項目を入力すると先へ進めます」
他にも、エラーメッセージでは間違いを指摘するだけでなく、次に何をすればいいのかまで簡潔に説明するなどの配慮も必要です。
(例)
×:「入力内容にエラーがあります」
〇:「カタカナで入力してください」
専門用語は一般的な言い回しに
専門用語はすべてのユーザーが理解できるとは限らないため、なるべく分かりやすく工夫することが大切です。専門用語を使わなくてはいけない場合は、補足や具体例を記載するか、図で説明するなどの配慮をしましょう。聞きなれない言葉はなるべく使わないのがUXライティングのポイントです。
(例)
×:「503 error Service Temporarily Unavailable」
〇:「ページが表示できません。時間を置いてからアクセスしてください」
一貫性を保つ
長い文章を書く場合は「同じ表現を何度も使わない」というルールが一般的です。しかし、UXライティングにおいては一貫して同じ表現を使用するようにしましょう。表現や表記を統一することでユーザーの混乱を防ぎ、操作性を向上させられます。
(例)
×:ページを切り替えるたびに、操作ボタンのテキストが「次へ」や「続ける」などまちまちになっている
〇:全ページの構造を整理して、操作ボタンのテキストを「次へ」で統一する
日本語特有の“丁寧な表現”を避ける
ユーザーに不快感を与えないために丁寧な表現を多用してしまいがちですが、文章が長くなりやすく、かえって分かりづらくなってしまいます。丁寧語や尊敬語は削ぎ落とし、シンプルな言い回しに置き換えることを意識しましょう。
(例)
×:「以下のボタンから登録していただきますようお願いいたします」
〇:「以下のボタンから登録してください」
ユーザーを快適に「導く」UXライティングを身につけよう
UXライティングは「伝える」よりも「導く」ことを重視したライティング手法であることがお分かりいただけたでしょうか。言葉ひとつでユーザーの離脱を防ぎ、満足度や信頼感も向上させられます。今回紹介した考え方やコツを実践し、ユーザーに寄り添った表現を意識してみましょう。
文:エクスライト編集部