2025.10.7

ソリューション

リスキリングとは? 既存の学習概念との違いや企業への導入方法までを解説

AIやデジタル技術などの進歩によって、私たちに求められる働き方やスキルも大きく変化しています。そんな中で注目されているのが、新たな知識やスキルを学び直す「リスキリング」という考え方です。

本記事では、リスキリングとは一体どのような考え方なのか、その定義や既存の学習概念との違い、企業が社員にリスキリングを推進する際の方法について解説します。

リスキリングとは?

リスキリングは英語で「Reskilling」と表記されます。現在のスキルと目指すべきスキルのギャップを埋めることを目指し、新たな知識や技術を習得して新しい仕事などに対応するための一連の学習や訓練のことを指しており、基本的には企業主導の取り組みであることが一般的で、経済産業省が発表している資料の中では次のように定義されています。

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」(※1)
参照:※1:第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会 資料2-2|経済産業省

なぜリスキリングが注目を集めている?

リスキリングが注目される背景には、AIをはじめとするさまざまなテクノロジーの普及・発展によって従来のスキルが通用しなくなってしまうという懸念や、産業構造の変化、労働力不足、働き方の多様化などのさまざまな要素が挙げられます。2020年の世界経済フォーラムの年次総会でリスキリングが主要な議題に上がったことで、世界中で注目を集めるようになりました。

特にDX化などを推進する企業においては、社員が新しい技術やテクノロジーに関する知識・スキルを新たに習得することが求められます。また、日本のように少子高齢化による労働力不足に悩まされている国においては、限られた労働力を再活用するために人材の再教育が必要不可欠となってきます。企業側にとっても、労働者個人にとっても、リスキリングはこれからの社会を生き抜いていく上で必要不可欠な考え方だと言えるでしょう。

リスキリングと「リカレント教育」「アンラーニング」との違いは?

リスキリングと似た概念として「リカレント教育」と「アンラーニング」というものがあります。リスキリングとはどのような違いがあるのか、整理しておきましょう。

リカレント教育とリスキリングの違い

リカレント(recurrent)という言葉には、「循環する」「繰り返す」といった意味があり、ここから「リカレント教育」は個人が必要なタイミングで教育を受け、また仕事に戻るといったことを繰り返す仕組みのことを指します。
リスキリングは企業主導の取り組みを指すことが多いですが、リカレント教育は個人主導のものであることが大きな違いです。またリスキリングは離職することなく学び直すことを前提としていますが、リカレント教育は一度仕事から離れて大学などの教育機関で学び直すといった点も違いとなります。

アンラーニングとリスキリングの違い

アンラーニングは「学習棄却」とも呼ばれ、既存の仕事の取り組み方やルーティンを修正し、新しいスタイルへと見直すことを意味します。

個人がこれまで習得した知識やスキルのうち、現在の状況に合わなくなったものを一度見直して、代わりに新しいスキルを取り込んだり、知識をアップデートするのが大きな特徴です。リスキリングはこれまで自分が触れてこなかった知識や技術を新たに学ぶことを意味しますが、アンラーニングの場合は自分が持っている知識やスキルを修正していくというところに違いがあります。

リスキリングを推進するメリットは?

企業がリスキリングを推進することで、社員個人のスキルアップ、企業のビジネス対応力向上など、さまざまなメリットが生まれます。ここからはより具体的に、リスキリングを推奨する意義について解説します。

新しいアイデアの醸成

リスキリングによって社員が新しいスキルを習得できれば、今までは思いつかなかったような斬新なアイデアが生まれやすくなり、事業の発展につながる可能性があります。また、社員自身が積極的にリスキリングに取り組むことで、他の社員にも新しい知識や技術を習得しようとするシナジーが発生するかもしれません。その結果、自発的に物事を考えられる人材が増え、社内のイノベーションにもつながります。

社員のモチベーションアップ

企業がリスキリングを推進し、社員に学びの場を提供すれば、個々人のキャリア形成の支援に役立ちます。それによって社員のモチベーションが上がると、社内エンゲージメントの向上や生産性の向上など、企業にも良い影響を与えるでしょう。

業務の効率化

新しく身につけたスキルを生かすことで業務の効率化につながり、残業の削減や新しい業務に対する時間の確保といった効果も期待できます。また業務効率化はワークライフバランスがとりやすくなるため、離職率の低下にもつながるでしょう。

会社への帰属意識の向上

リスキリングによって新しい知識やスキルを習得した社員は、既存業務と新規業務、双方に対応しやすくなります。新しい部署や事業を立ち上げる場合、リスキングを行った社員に任せることで、円滑に進められることが期待できます。そのように、企業の成長とともに社員が成長できる環境を整えることができれば、会社への帰属意識や貢献意識の醸成にもつながるでしょう。

リスキリングを推進するためのステップ

企業がリスキリングを推進する際には、組織全体で取り組むことはもちろん、社員に対する細やかなサポートも必要です。リスキリング推進の主な流れを、4つのステップに分けて紹介します。

ステップ1.事業戦略に基づいた人材像やスキルの設定

まずはリスキリングの取り組みが本当に必要かを判断するため、経営戦略に基づいて必要な人材像を明確化します。今後の自社事業に必要なスキルを持った人材が現在の社内に乏しい場合は、リスキリングを実施すべき状況といえるでしょう。

続いて現状の社員がどのようなスキルを持っているのか、各事業所・部署ごとに人材の状況を可視化し、具体的に今後どのようなスキルが必要になるのかを把握します。スキルの可視化は人材配置を効率的に行うためにも重要なプロセスです。もし社内に人材管理システムを導入している場合は、こうした社員のスキルの可視化を効率的に行える可能性もあります。

ステップ2.教育プログラムの決定

社員のスキルを可視化したら、リスキングの具体的な方法を検討します。社員に対し学習方法を幅広く用意しておくことで、個人に合ったリスキリングの方法を選択できます。具体的には、研修やオンライン講座、社会人大学、eラーニングなどがあります。

また、社員がリスキリングに集中できるよう、あらかじめ学習時間や学習するスペースなどを確保することも重要です。教材は外部のコンテンツを用いてもよいですし、もし独自の技術を所有する企業なら、自社で開発することも可能でしょう。予算や運用体制を考慮し、適切な方法・プログラムを選択することが重要です。

ステップ3.実際にリスキリングに着手

教育プログラムが手配できたら、社員の意見も聞きながら学習時間や場所などを決定し、プログラムに着手します。新しいスキルを身に着けることはは、人によっては負担になったり、ストレスを感じたりすることもあります。一方的に強制するのではなく「知識やスキルを習得したい」という社員本人の意思を引き出すことが重要です。
例えば、社内勉強会を定期的に開催しつつも、参加はあくまで任意という仕組みにするなど、主体性を促すような工夫も効果的かもしれません。社員同士が学んだ知識やスキルを共有し合えるよう、チャットツールなどを提供するのもよいでしょう。

ステップ4.リスキリングで学んだことを実践する

新しく習得した知識やスキルは、実際に業務の中で実践することが大切です。実践した結果に対して、フィードバックや評価も忘れずに行い、リスキングの効果を測定しながら繰り返しスキルを磨いてもらうようにしましょう。

チェックリストへの記入や演習などでスキルの定着率を測定したり、作業効率の変化を測定したりして業務への影響を評価したりできれば、リスキリングの効果も把握できるでしょう。社員の満足度などもアンケート調査やミーティング等で確認することが大切です。

自主性を尊重し、無理なくリスキリングを進めていくために

繰り返しにはなりますが、リスキリングを推進するにあたっては、以下の2つを意識しておくことが非常に重要です。

  • 社員が取り組みやすい環境を整備する
  • 社員の自主性を尊重する

リスキリングが必要なのかを社内全体に周知することはもちろん、リスキリングのメリットや勉強会の内容について、丁寧に説明していきましょう。

また、業務時間内に勉強会を実施する際は他の社員から理解を得られるよう配慮する必要があります。さらに多忙の中でもリスキリングを希望する社員に対しては、隙間時間を使ってできる柔軟な教育プログラムを取り入れるなど、負担を軽減するための対策も求められるでしょう。社員が負担を感じることなく、リスキリングを続けていけるような持続性のある環境を用意することが何よりも大切です。

文:エクスライト編集部

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