
なぜコンテンツ制作には「編集者」が必要なのか?
はじめに:「編集者」という仕事のわからなさ
突然ですが、あなたは記事コンテンツ制作における「編集者」という仕事を、ひと言で説明できるでしょうか?
クライアントとライターをつなぐエージェント?
それとも、インタビューや撮影を取り仕切る現場責任者?
はたまた、ライターの原稿を添削する文章の達人?
どれも正解ではありそうだけど、これだけでもなさそうな気がする。そんなつかみどころのなさを、編集者という仕事に対して感じているのではないでしょうか。
おそらく、この記事を読んでいるみなさんは、すでに何らかの形で編集者と呼ばれる人たちと接した経験のある方が多いかと思います。しかし、コンテンツ制作を通して編集者が何をしているのかは、これまでのやりとりを振り返ってみても、今ひとつピンと来ないという方も少なくないのではないでしょうか。
極論、記事コンテンツは「テキスト」と「画像」があれば成立します。コンテンツの制作方法としては、発注者(クライアント)となるあなた自身がフリーのライターやカメラマンに直接発注することもできますし、いっそ自分自身でテキストを書き、画像を用意して記事を作り上げることもできるでしょう。
一方、編集者が所属している編集会社(エクスライトもその一つです)にコンテンツ制作を発注すれば、あなたの作業時間を減らすことができ、上がってくる記事も確かな品質のものが期待できるはずです。とはいえ、決して高くないコストと編集者の存在を天秤にかけたとき、本当に「編集者は必要不可欠」と言い切れるのでしょうか?
そこでこの記事は、「編集者とはなぜ必要か」という問いを、エクスライトなりに深掘ってみたいと思います。
- そもそも編集者とは何者なのか?
- 編集者がいないと、どんなことが起こるのか?
- そして、編集者はコンテンツ制作を通して何をしているのか?
これら3つの視点から、一緒に解き明かしていきましょう。
目次
1:編集者とは何者なのか?
そもそも「編集」って?
国語辞典によれば、「編集者」は以下のように定義されています。
◉ 編集者
雑誌、書籍などの編集にたずさわる人。また、編集著作物を代表する者をもいう。編者。
——出典 精選版 日本国語大辞典
この説明のとおり、「編集者」が何者であるかを理解するためには、まず「編集」とはどのような行為なのかを知っておく必要がありそうです。
続いて、「編集」という言葉を引いてみましょう。
◉ 編集
一定の企画のもとに、書籍・新聞・雑誌などをまとめること。また、その仕事。編纂。なお、著作権法上では、独立した複数の著作物を適法に一定の体系のもとに集録することをいう。
——出典 精選版 日本国語大辞典
まだ分かりにくさはありますが、何らかのメディアに掲載することを前提に、決まった企画に沿って情報を集め、一つにまとめ上げる作業が「編集」。そしてそれを職業として行っている人を「編集者」と呼ぶことができそうです。
編集者のパブリックイメージ
とはいえ、辞書に書かれている「編集者」の定義は、少々古臭く感じるかもしれません。というのも、昨今の編集者のあり方は、実に多岐にわたっているためです。そんな中でも、メディアやSNSを通して作られてきた「編集者のイメージ」は、例えばこんな人たちではないでしょうか。
1. 時代の最先端を走るマンガ編集者
大手出版社のマンガ編集部に所属。才能あふれる若手漫画家を発掘し、時代の空気をとらえた作品を量産し続ける。アニメ化・映画化された作品も多数で、SNSのフォロワー数はインフルエンサー並みに多く、イベントにも積極的に登壇。もはや、編集者自身が一つの「メディア」として力を持っている。
2. トレンドをウォッチし続ける雑誌編集者
出版社のファッション誌の編集部に所属。メインフィールドのファッションはもちろん、音楽に映画、本、アート、グルメ、スポーツ……あらゆるジャンルにアンテナを立てて、常に最先端の情報をキャッチしている。カメラマンやデザイナーなどクリエイター系の友人も多く、激務をさらりとこなしながらも、遊びの延長のように編集者ライフを楽しむ。
3. 職人のごとき辞書編集者
小規模な専門系出版社に所属する、この道数十年のベテラン辞書編集(編纂)者。その仕事にスポットライトが当たる機会は決して多くないが、長い年月をかけて1,000頁超に及ぶ書物を作り続ける姿は、まるで職人のよう。
4. ボーダレスに活躍する新時代の編集者
書籍やWeb記事の編集はもちろんのこと、自身も文筆家として活動。そのフィールドはコンテンツ制作だけにとどまらず、イベント企画や店舗プロデュースなど「編集」の枠を拡張するような活躍で、メディアからも注目を集めている。
4つのイメージを見比べてもわかる通り、編集者が働くフィールドや仕事のスタイルは、非常に多様かつ複雑で、「ここからここまでが編集者の仕事」と定義するのは至難の業です。
逆に言うと、「編集」を軸にしていれば、自分自身のあり方次第で、どこまでも世界を広げていけるのも言えるかもしれません。例えば、長年出版社で実用書の制作に携わってきた編集者が、これまで培ってきた専門性とAIを組み合わせ、新しい編集者像を築き上げていく可能性もあるでしょう。
クライアントワークとしての編集
ここで、私たちエクスライトに在籍する編集者についても、簡単に紹介させてください。
エクスライトは、主にWeb領域のテキストを中心にコンテンツ制作を行う「編集会社」です。私たちの仕事は、まずはクライアントから「案件」の依頼を受けることから始まります。
直接のクライアントとなるのは、広告代理店やデザインチームといった制作会社と、サービス業や製造業、IT企業などの事業会社。依頼の内容は、オウンドメディアの運用から社員インタビュー、サービスコピー制作、イベントの台本作成までさまざまです。
こうしたクライアントワークは、編集者の「これを作りたい」というエゴだけでは成り立ちません。クライアント企業の事業や人、サービスを深く理解し、コミュニケーションを重ね、最適な届け方でその魅力を発信するスキルが、エクスライトの編集者には求められます。先ほどのイメージになぞらえるならば、「クライアントに寄り添う伴走型編集者」と言えるかもしれません。
2:編集者がいなかったら何が起こるのか?
さて、ここまでは大枠での「編集者」の輪郭をなぞってきましたが、この章ではコンテンツ制作の中で編集者がどのような役割を担っているのか、もう少し解像度を上げてみたいと思います。
「もし編集者を立てることなく、クライアントと制作スタッフのみでコンテンツを制作した場合、どんなことが起こり得るのか?」という角度から、クライアント・Aさんの視点で考えてみましょう。
編集者がいない時に起こること 〜インタビュー記事制作の場合〜
◉いいライターが見つからない
とある中規模の事業会社に勤めるAさんは、広報部に異動となり、自社で新たに立ち上がったばかりのオウンドメディアの担当者を任されました。これまで編集・ライティングの経験はなく、編集会社にもツテがないため、まずはインタビュー記事を書いてくれるライターを、自力で探すことにしました。
ひとまず手軽そうなクラウドソーシングサービスで「インタビュー ライター」と検索してみると、かなりの数のライターがヒットします。とはいえ、自社の事業にまつわる知識を持っているのか、どんな風にインタビューしてくれるのか、原稿はどんなものを上げてくれるのか、原稿料は適正なのか、本当に最後まで仕事をやりきってくれるのか……不安材料は少なくありません。この中から、これから先一緒にメディアを作ってくれるパートナーを見つけ出すには、想像以上に長い時間を費やすことになりそうです。
【いいライターが見つからない要因】
- ライターという職種についての基礎知識・業界理解が不足している
- ライターを選ぶ際の基準が、Aさんの中で固まっていない
- ライターの探し方や探し先が、自身のニーズとマッチしていない可能性がある
◉インタビューが上手くいかない
ようやく依頼したいライターが決まり、まずはそのうちの一人に、直近のインタビュー取材・執筆を引き受けてもらえることに。「自社内のベテラン社員へのインタビュー記事を作りたい」というオーダーをメールで伝え、オンラインミーティングで簡単な挨拶と説明を済ませ、対面での取材に臨みます。
しかし、いざインタビューが始まってみると、どうも盛り上がりません。確かに、ライターは事前に用意してきた質問どおり進めてくれていて、インタビュイー(取材対象者)もあらかじめ考えてきたであろう回答を、丁寧に話してくれている。それなのに、全てが予定調和で、インタビューならではの面白さが感じられない。結局、「これだ」といったフレーズや印象的なエピソードが十分に出てこないまま時間を迎え、インタビューは終了。記事は何とかつくれそうだけど、そこにいた全員が、心の中にモヤっとした感触を残したまま、取材はお開きとなりました。
【インタビューが上手くいかなかった要因】
- 記事の目的が、ライター・インタビュイー双方と共有しきれていない
- 事前に用意してきた質問や回答にとらわれるがあまり、インタビューという場ならではの広がりが生まれなかった
- 企画やインタビュイーに対して、ライターがマッチしていない可能性がある
◉上がってきた原稿が何か違う
取材を終えてから数日、締切より2日ほど遅れてライターから原稿が上がってきました。まずは一度、二度と目を通してみるAさんですが、読み返すたびに大きくなってくるのは、「イメージしていたものと何か違うぞ」という感覚です。インタビューで聞いた話に対して間違ったことは書かれていないけれど、テンポが悪くて読みづらく、いまいち内容が入ってこない。細かく文章を点検していくと、不自然な日本語表現や誤字脱字もある。
この違和感を、どう言葉で表現すればいいのだろう…? ライターに修正依頼をお願いしようか迷うけども、相手はプロかつ、初めて仕事をご一緒する方なので、失礼なことを言って関係性を悪くしたくない。結局、公開まで時間もないので、Aさん自身が原稿に手を入れることになってしまいました。
【上がってきた原稿に違和感を持った要因】
- 「インタビュー」を「記事」にする際に目指すべきゴールが、Aさんとライターの間で共有できていない
- 記事の仕様がAさんとライターの間で固まっていない
- ライターから上がってきた原稿のクオリティが十分ではない可能性がある
◉修正が上手くいかない
いざ原稿を直し始めると、どんどん気になる箇所が出てきます。こちらを直せば、また別の箇所を直さないと整合性が取れない。もっと別の表現がありそうだけど、いいワードやフレーズが思い付かない。気が付けば一日がかりの修正作業となってしまいました。
最終的に、なんとか公開まで漕ぎ着けることができたものの、果たして「いい記事」を作ることはできたのか、この調子でこの先仕事を回し続けられるのか、今回依頼したライターには今後も仕事をお願いするべきなのか…Aさんの不安は尽きません。
【修正が上手くいかなかった要因】
- コンテンツ制作に必要な、基礎的な執筆・編集スキルが不足している
- 明確な編集プランのないまま、修正作業を進めてしまった
- 修正が目的化してしまい、必要以上に手を加えてしまっている可能性がある
ライターに対して何ができるか?
編集者不在のままコンテンツをつくるというのがどのようなことなのか。Aさんのケースから、その道のりの険しさを何となくイメージできたでしょうか。
もちろん、これは想定される最悪のシナリオです。仮にAさんはあくまでも「発注者」としての役割に徹し、制作面はライターに丸ごと任せてしてしまっても、インタビューは大成功し、素晴らしいクオリティの原稿が上がってくることも十分あり得るでしょう。
ただし、ライターも完璧ではありません。インタビューの場では、企業・事業への理解度やインタビュイーとの相性、取材当日のコンディションによっては、ベストなパフォーマンスを発揮できないこともあるでしょう。また、ライティングにおいても、「記事のゴール」や「仕上がりイメージ」の共有を受けていなければ、満足のいく原稿を書き上げることができないはずです。
だからこそ、最適なライターを選び、ベストなパフォーマンスを発揮してもらうためのサポートをあらゆる角度から行い、ときにはインタビューや執筆を直接アシストできる存在が、コンテンツ制作には必要なのです。
Aさんはどうすればよかったのか?
Aさんの場合は、インタビュー記事の制作経験が不足しているがゆえ、自身の役割もライターの役割も曖昧なまま制作を進めてしまったことに、失敗の原因がありました。もちろん、今後経験を積んでいけば、Aさん自身が発注者でありながら、ライターをサポートする存在としても成長していけることでしょう。
とはいえ、メディア運用に限らないさまざまな社内業務をこなしながら、コンテンツ制作に必要なあらゆる知識やスキルを身に付け、全ての記事をするのは至難の業です。だからこそ、Aさんのパートナーとして共に併走し、プロフェッショナルならではの知見や経験を生かして制作全体をリードする存在として、「編集者」の力を借りるという選択肢が生まれてくるのです。
そして、ここまでは便宜上、ライターとの仕事に絞ってこうした役割は、ライターに対してのみならず、カメラマンやイラストレーターなど、記事制作に携わるすべてのスタッフに対して必要となってきます。
3. 編集者は何をしているのか?
ここまで読み進めてきたあなたなら、おぼろげだった編集者の役割や価値を、だいぶ捉えることができたのではないでしょうか。ここからはいよいよ、コンテンツ制作における編集者の「実務」について、さらに詳しく掘り下げていきます。
エクスライトなりの編集アプローチ 〜インタビュー記事制作の場合〜
繰り返しにはなりますが、編集者のあり方が多様化している時代、「これが編集者の仕事」と定義するのは容易ではありません。こと編集会社にいたっても、各社ごとに独自の「編集観」を養い、自社のビジネスとしています。
そこで今回は、エクスライトの編集者はコンテンツ制作の一連の流れで、何を行い、何を大切にしてているのか、10のポイントから紹介したいと思います。
1. 案件理解:未知の分野をひも解く
クライアントワークの最初の一歩となるのが、クライアント企業・事業、サービスや商品、そして依頼内容の理解です。exwriteの編集者の場合、担当するのは慣れ親しんだ分野の案件ばかりではありません(むしろ、未知の分野がほとんどです)。そこで各編集者は、さまざまな方法を駆使してインプットを行い、案件全体に関する解像度を高めていくことで、ようやくクライアントと同じスタートラインに立つことができるようになります。
2. 企画:コンテンツのベストな届け方をデザインする
コンテンツ制作の核となるのは「企画」です。企画といっても、ユニークでエッジの立ったものがすべてではありません。例えば、クライアントから「ある新商品を発売するので、販促につながる記事を作ってほしい」といった依頼を受けたとします。それを記事にするためには、開発担当者にインタビューを行い、商品にかける思いを語ってもらうのか。または商品開発に携わった各部門の人を集め、座談会形式で話り合ってもらうのか。もしくはライターに商品を渡して、消費者目線からリアルなレビューをしてもらうのか。このように、コンテンツの目的に最適な届け方をデザインするのも、一つの「企画」なのです。
3. 仕様設計:目指すべき記事の姿をクリアにする
メディアを新たに立ち上げる場合や、これまでに作ったことのないタイプのコンテンツを制作する場合に必要となるのが、「記事仕様」です。文体はどんな形が適当なのか、文章のトーンはどんな具合か、文字数はどれくらい必要なのかといった点を、一つひとつ設計していくことで、目指すべき記事の姿が立ち上がっていきます。もし、仕様だけでは仕上がりイメージが見えず不安を感じているクライアントがいれば、丸ごと一本、仮の記事を書き上げる「プロトタイピング」を行うこともあるのです。
4. 依頼:最適なライターを見極める
ライターは一人ひとり、専門性や書き口、人柄といった、さまざまな強みや魅力を持っています。ライターに依頼をかけるのは編集者の大きな仕事ですが、無数の選択肢の中からそんなライターを選ぶかは、案件全体の成功を占う重要なポイントです。どんな案件でも成果を出してくれるオールラウンダータイプのライターを頼るのか。それとも、案件分野に特化した専門ライターをワンポイントで起用するのか。その見極めは、編集者の経験やスキルが問われるでしょう。
⑤構成・質問作成:ゴールに持っていくための道筋を引く
インタビューの質問事項や記事構成の作成は、ライターに頼むことも選択肢の一つですが、エクスライトでは主に編集者が行っています。質問と構成案は、コンテンツを通して目指すべきゴールに確実に辿り着くための「道筋」を引くようなもの。インタビューは必ずしも用意してきた質問案どおり進めるとは限りませんが、少なくとも「こうすればゴールに辿り着けますよ」という道筋を関係者に共有しておくことで、取材当日の安心感がぐっと高まるものです。
6. 取材準備:情報のギャップを埋める
コンテンツの発注者であるクライアントと、編集者経由で案件に参加するライターとでは、コンテンツに対する理解も熱量も異なるのが当然です。意外と見落とされがちですが、そのギャップを埋めて行くのも編集者の役割でしょう。オンラインでの打ち合わせやメールなどさまざまな方法で、ここまでに得た情報や資料をライターにわかりやすく下ろすことができれば、ライターも必要な準備を行うことができ、インタビューの成功率はグッと高まるはずです。
7. 取材:「第二のインタビュアー」を担う
一概には言い切れませんが、基本的にインタビューの場の主役は、編集者ではなくライターす。とはいえ、編集者は完全にライターに任せ、傍観している訳ではありません。インタビューの進行状況や取れ高を見ながら、掘り下げきれていない内容をカバーするための追加質問を挟んだり、ライターが頭の中を整理できるよう箸休め的な質問を投げていくことも必要となります。また、ライターが当日体調不良で同席できない場合は、編集者がインタビューを進めていく必要もあるかもしれません。このように、編集者は「第二のインタビュアー」として参加することで、インタビューの精度をより高めていける可能性があります。
8. 軌道修正:着地点を再設定する
インタビューは、人と人との「対話」です。どれだけシナリオを思い描いていても、当初想定していた内容とは異なる方向に、話が転がっていくケースもあるでしょう。記事の狙いから大き外れた話になってしまうこともあれば、想像以上に面白い話を聞けることだってあるかもしれません。そのような場合は、取材を受けてどのようなゴールを目指していくべきなのか、改めてクライアントやライターと着地点を擦り合わせることも必要となります。
9. 編集:原稿を何度も読み返し、磨き上げる
記事制作における「編集」とは、シンプルにいえば、ライターから上がってきた「原稿」を磨き上げ、納品物としての基準を満たした「初稿」を作り上げる作業です。よく編集者の象徴的な仕事として、原稿に「赤字(修正指示)」を入れる様子をイメージする方も多いかと思いますが、大切なのは「赤字を入れる」ことよりも「この記事をより良くするにはどうすればいいか」を突き止め、編集プランを考えていくことです。
もしライターから、擦り合わせた内容と大きくずれている原稿が上がってきてしまったら、修正依頼をかけて、ライター自身にブラッシュアップしてもらう必要があるでしょう。また、それが必要な修正が軽微かつスケジュールも限られていれば、編集者自身が直接原稿に手を入れることも有効なやり方となるでしょう。このように、原稿の状態やスケジュールなどさまざまな点を考慮して、最適な編集プランを考え、納品物のクオリティを高めていきます。
また、編集作業の中では、固有名詞は正しい形になっているか、表記ルールに沿って記載されているかといった、「校正・校閲」も担う必要があります。鳥の目線で記事全体を見渡し、虫の目線で一言一句を点検する。それゆえ編集者は、一本の原稿を何度となく読み返しては、調整していくことを繰り返しながら、地味に記事のクオリティを高めていくのです。
10. フィードバック:今後を見据えてライターを育てる
エクスライトの案件は、1本のコンテンツを作って終わりではなく、複数本の記事をまとめて制作したり、「運用」という形で継続的に制作していくことが少なくありません。そのため、編集者自身が案件に適応していくことはもちろん、ライターにも案件に定着してもらえるよう、次回に向けたフィードバックやフォローを行うことが大切です。クライアントが「このライターさんであれば大丈夫」と安心できる関係性を築くことができれば、その案件は軌道に乗ったと言えるでしょう。
11. 進行管理:スケジュールに沿って確実に進行する
最後に忘れてはならないのが、スケジュール管理です。それぞれの作業工程ごとにどのくらいの日数が必要なのかを算出し、関係者全員ができるだけ無理をしないで済むよう、調整を行う。万が一、遅れが発生してしまう場合、どのように調整していくのかも、編集者の腕の見せどころです。
おわりに:コンテンツ制作という長旅のパートナーとして
さて、3つのパートを通して語ってきた「編集者はなぜ必要か」という問いに対する長い回答も、ここでようやく区切りを迎えます。
Aさんのパートでも触れたとおり、ここまでに挙げてきた編集者の役割は、クライアント側で担うことも不可能ではありません。編集経験のあるスタッフを自社内に引き入れ、内製できる体制を整えるのも一つの正解ですし、AIを上手に育てあなた専属の編集アシスタントとして活用することで、先に挙げた業務の一部は代替することができるでしょう。
それでも、外部の編集会社に依頼し、編集者を入れることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
その答えは、詰まるところ「人」にあるのではないかと考えます。なぜなら、クライアントワークの根っこには、「この商品の魅力を多くの人に伝えたい」「自社の取り組みを社会に知ってほしい」という、クライアントの想いがあるためです。想いに宿った“熱”を保温したままライターをはじめとする制作スタッフと共有し、インタビューやライティングを通して“再点火”して届ける。それはおそらくこの先も人——つまり「編集者」にしかできない仕事ではないでしょうか。
そして何より、あなたにとってのパートナーと呼べる編集者を見つけることは、数ヶ月〜数年におよぶ「コンテンツ制作」という長旅の道中を、何倍も豊かな時間に変えてくれるはずです。
文:エクスライト編集部